ファストファッションの裏側 ラナプラザの悲劇の意味

ファッション産業の現状、について語るときに避けては通れない事故がある。2013年4月24日朝9時、バングラデシュの首都ダッカ北西約20kmにあるサバールで、8階建ての商業ビル「ラナプラザ」が崩壊した事故だ。

バングラデシュは1日2ドル未満で暮らす貧困層が国民の75%を超えるアジア最貧国、貧困の主な理由は自然災害や治安行政の脆弱さ等といわれる。最貧国ならではの極めて安い人件費と豊富な労働力を活かして世界の主要な衣料品メーカーの工場を誘致し、縫製産業はバングラデシュの主要産業となった。縫製業に従事する国民は400万人以上、その大半が女性。

このビルには銀行や商店と共に、欧米の衣料品ブランドであるマンゴー、ベネトン、プライマークなど27のブランドを対象とする5つの縫製工場が入っており、4,000人ほどの従業員が働いていた。

死者1,130人以上、負傷者2,500人以上、500人以上が行方不明。


事故の原因はずさんな安全管理。生産量をひたすら上げることを最優先に安全管理も従業員の避難もすべてなおざりにされた。

工業地帯サパールは5-6階建てビルのアパレル工場の集まる地域で、その中でもラナプラザは特に大規模だった。地元の有力政治家ラナ氏の所有物だった。欧米企業からの需要に応え生産量を上げるため工場を広げる、コストを下げるために鉄筋も使わず違法な増築を幾度も繰り返し4階建から8階建へ、建物の強度に問題を生じているところへ大勢の従業員を寿司詰め状態で働かせていた。事故前日の4月23日には既にビル全体に亀裂が発見されていたが、従業員の避難を許さず働かないと月給を払わないと脅し強制的に操業を続けたという。翌日崩壊は起こった。

さらに本質的な原因。

ひどい工場経営者がいるものだと他人事、ではない

工場から発見されたのは欧米の大手アパレルメーカーの商品。普段わたしたちが目にする安価なファッションブランドたち。より安くよりたくさんの商品を提供するために貧困国の安価な労働力を搾取する、このしくみがこの悲劇を招いている。


工場での火災などによる死亡事故はこれまでも何度も起こっていた。2012年11月ダッカにあるタズリーンファッション社の衣料品工場の火災で117人の労働者が死亡した。タズリーンの工場では米小売大手の「ウォルマート」と「シアーズ」の衣料を製造。しかし両小売業者は「知らなかった」と述べ、内密に下請けしていた製造業者を非難したという。日常的に「ヤミ下請け」が横行していたバングラデシュの現状。最低賃金68$/月という低さからさらに見えてこない下請け工場では条件の悪い中で働かざるを得ない人々がたくさんいたのだ。


皮肉なことにラナプラザの被害のあまりの大きさにより、グローバル展開する欧米や日本の大手衣料品業者が彼らの劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が認識される契機となり、国際産業別労働組合組織UNI、労働者権利組合Worker Rights Consortium、NGO等を中心に火災予防及び建設物の安全にかかわる協定が強化され、安全審査を徹底する動きが強まった。バングラデシュ縫製工場の安全性確保のための国際合意「アコード(バングラデシュ火災・建物安全合意)」が創設されヨーロッパのアパレルブランドを中心に参加を表明、米国系企業を中心にアライアンス(バングラデシュ労働者の安全のための同盟)が結成。事故からもうすぐ4年、その後の動きをまた後日整理したい。



↓New York Timesの現地フォトジャーナリストによるラナプラザ崩壊事故のようす。

5分程度の動画だが、当時の様子がリアルに収められている。見つかったタグから委託していた欧米ブランドも記載。



↓事故から1年後、ピープル・ツリー/グローバル・ヴィレッジ代表のサフィア・ミニーが訪問した際のようす。またフェアトレードで実現できていることのようす。

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